インプラント治療とは、歯肉を切開して顎の骨に穴を開け、インプラント体を埋め込むことを言います。歯肉を剥離する術式は、インプラントを取り入れているほとんどの歯科医院で行われている術式ですが、歯肉を切開しない「フラップレスインプラント」があります。歯肉を切開せず、患者様に負担が少ないフラップレスインプラントを取り入れる歯科医院が徐々に増えていますが、中には不向きなケースもあります。今回は、フラップレスインプラントの特徴と、どのようなケースが不向きかについてお話を進めたいと思います。

一般的なインプラント治療について

一般的なインプラント治療はほとんどの場合、外科手術を二度行うニ回法が行われます。局所麻酔を打ったあとに歯肉をメスで切開し、専用の器具で歯ぐきを骨から剥離します。こうすることにより顎の骨が露出し、インプラントを埋入する位置を目で確認することができます。
続いてドリルで顎の骨に穴を開け、慎重にインプラント体を埋め込み、縫合して骨とインプラント体の安静期間に入ります。骨とインプラント体の結合を確認後、二度目の外科手術を行い、歯ぐきを少し切開して先端を露出させ、連結部分であるアバットメントを取り付けて再び縫合をします。1週間程度で糸を抜き、人工歯の型取りを行って装着し、インプラント治療を終えるというのが、一連の流れです。

フラップレスインプラントとは

ではフラップレスインプラントとはどのような手法なのでしょうか。フラップレスとは、歯ぐきの切開を行わず、あらかじめ作製した手術用のテンプレートに沿って小さな穴を開けてインプラントを埋入する「切開しないインプラント治療」のことです。一般的なインプラント手術と比較してみましょう。

・歯ぐきを切開しないため出血が少なく、術後の痛み、腫れを軽減できる
・CT撮影およびコンピュータによる精密な設計を立案するため、より安全で正確な位置にインプラント体を埋め込むことができる
・手術時間が短くて済み、外科手術も一度だけ
・高血圧などの全身疾患があっても手術できる可能性が高い
・フラップレスインプラントは事前にインプラントを埋め込むための最適な位置をコンピュータ上でシュミレーションするため、歯肉を切開することなく正確な位置にインプラントを埋め込みます。つまり歯肉の切開、剥離そして糸で縫う必要がなく、インプラントを最適な位置に埋め込むことで、安全性の高いインプラント治療法を実現できることが大きな特徴です。

また通常のインプラントは手術を二度行うニ回法がほとんどですが、フラップレスでは一度の手術で済みます。従来の術式において二次手術は比較的簡単な処置とはいえ、外科手術は一度だけで済むため、体への負担および通院回数の軽減できます。そのため患者様への負担が少なくて済むこともフラップレスインプラントの優れたところと言えるでしょう。

フラップレスインプラントの流れ

    では次に、フラップレスインプラントによる治療はどのような流れで行われるのかについて説明します。

    ・カウンセリングおよび治療計画の立案
    ・レントゲン、CT撮影など各種精密検査
    ・サージカルガイド(インプラント埋入用のテンプレート)の作製
    ・局所麻酔後、テンプレートの装着
    ・テンプレートのガイドに沿って穴を開けて顎の骨を削り、インプラント体を埋め込む
    ・顎の骨とインプラント体の結合後、歯型を採取して上部構造(被せ物)を作製、装着する

    フラップレスインプラントでは小さな穴を歯ぐきに開けてインプラント体を埋入します。歯ぐきの切開を行わないため出血も少なく、縫合の必要もありません。傷も小さくて済み、術後の痛みや腫れを感じることもほとんどなく、日常生活にも差し障りがありません。ほとんどの場合、インプラント手術後は一時的に腫れを伴います。そのため通常の抜歯後のように食事や歯磨きが行いにくい状態になる方もいらっしゃいますが、フラップレスインプラントは傷が小さく、出血も少ないことから術後の生活にもほとんど影響がなく過ごしていただけます。

    フラップレスインプラントが不向きなケースとは?

    患者様への負担が少なく、安全性が高いフラップレスインプラントは、従来のインプラント手術に比べてメリットが多い治療法です。しかし、全てのケースにおいてフラップレスインプラントが適用できるとは限りません。

    顎の骨の量が不足

    フラップレスインプラントが不向きなケースとしては、顎の骨の量が不足していることです。事前検査でシュミレーションしていても、実際の手術の中でフラップレスインプラントが不向きであると判断された場合、従来の歯ぐきを切開する術式に変更となることがあります。

    歯肉の状態次第で・・・

    歯肉の状態によっては、フラップレスインプラントができないこともあります。このように、事前のシュミレーションでフラップレスインプラントに決定していても、手術の最中でフラップレスが不向きと判断されるケースがあることを理解しておく必要があります。

    メンテナンスを怠る方

    せっかくフラップレスインプラントを行っても、術後のメンテナンスを怠る方も不向きです。これは従来のインプラントも同様ですが、インプラント治療後は丁寧なセルフケアと、定期的なメンテナンスが欠かせません。インプラントを長持ちさせ、快適な毎日を過ごすためにはメンテナンスが不可欠ですが、これらが面倒と感じる方にはインプラント治療自体が不向きなのです。

    フラップレスインプラントで失敗しないためには


    メリットの多いフラップレスインプラントですが、歯肉を切開せずに最適な位置へインプラント体を埋入するためには非常に高度なテクニックが必要です。もしインプラントの位置がズレていると噛み合わせがおかしくなり、しっかり噛めません。それどころか、インプラントのグラつきや血管などを傷つける原因にもなってしまいます。しびれが残ったり、最悪の場合、インプラントを撤去しなくてはならない場合もあります。

    ■まとめ

    このような失敗を招かないためにも、フラップレスインプラントをお考えの方は、フラップレスインプラントの実績や経験が歯科医院を選ぶようにして下さい。
    またフラップレスインプラントを希望していても、顎の骨の量やインプラントの本数により希望に添えない場合もあります。最良の結果を得るためにも、事前のカウンセリングでしっかりと方針を確認しておきましょう。