歯をすべて失った場合、総入れ歯(フルデンチャー)を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。総入れ歯を使っていると経年と共に骨や歯ぐきが痩せてしまい、どうしても入れ歯が合わなくなってしまいます。そんな不具合を感じずに済むのがインプラントオーバーデンチャーなのです。どのような装置なのか、メリット・デメリットも併せて詳しくご紹介したいと思います。
インプラントオーバーデンチャーとは
インプラントオーバーデンチャーはすべての歯を失ってしまった場合や、現在総入れ歯を使用している方に適応される装置です。インプラントの際に使われる人工歯根(インプラント体)を土台として2~4本埋入します。そして、総入れ歯の歯茎と接する部分(義歯床)のインプラントが入っている部分と接する部分に磁石を取り付け、磁力の引き合う力で入れ歯が外れないよう安定させます。
- 取り扱いは通常の入れ歯と変わりません
- 約35万円~100万円前後
- 骨量が少なくても施術できる
- 現在の入れ歯が外れやすいという悩みを解消できる
- インプラントやオールオン4よりも安価
- 取り扱いが簡単
- 歯ぐきや周辺組織の負担が少ない
- 外科的手術が必要になる
- 入れ歯の破損に注意
- 取り外して清掃が必要
- 通常の入れ歯よりは高価
単体のインプラントとは違い磁力でくっ付いているので、ある程度の力を加えれば自分で取り外すことができます。総入れ歯の不具合に抵抗感がある方で、オールオン4というインプラントは高額になるため、どうも手が出ないな…と迷っていらっしゃる方におすすめの装置です。
費用の目安は?
インプラントオーバーデンチャーは、総入れ歯ではありますが、保険適応外の装置です。
料金は歯科医院によって設定金額に差があります。装置の料金だけなのか、診察や精査にかかる費用も含まれているのかなど、確認しておかれることをオススメします。
埋入するインプラントの本数や、入れ歯に使われる素材によっても差があります。
ご自身の口腔内の状況によって処置も異なりますので、費用の見積もりをしっかり確認して治療を受けるようにしましょう。
オーバーデンチャーのメリットとは
オーバーデンチャーは総入れ歯で起こり得るトラブルや不具合を解消してくれる装置です。
現在、通常の総入れ歯でお困りの方、もしくはこれから総入れ歯にすることに抵抗がある方にオススメ。そこで、具体的にどのようなメリットがあるのかご紹介したいと思います。
そもそも歯を歯周病で失った場合、顎の骨が破壊されて薄くなっていることがあります。また、長年総入れ歯を使っていることで骨と歯茎が痩せている場合、土台が埋入できないとインプラントを断られることがあります。オーバーデンチャーの場合、前歯あたりに2本の土台を埋入できるだけの骨量があれば施術することが可能なため、インプラントできない方も施術できる可能性の高い装置です。
骨や歯ぐきが痩せて入れ歯が合わなくなってくると、会話や食事をする際に外れてしまうことがあります。オーバーデンチャーは入れ歯が骨に埋入されたインプラントとの磁力で引き合うため、簡単に外れるとったトラブルは解消されます。
通常インプラントは1歯につき1本の土台でおこないます。埋め込む本数が多ければそれだけ施術費は高くなります。オーバーデンチャーはインプラント埋入術は2~4本で済むため、すべてインプラントにするより費用を抑えることができます。
インプラントやオールオン4は固定式の装置です。そこで日常の清掃やメンテナンスがとても重要です。オーバーデンチャーは取り外すことができるため、お手入れや口内の清掃もしやすいので、お年寄りでも取り扱いがしやすい装置です。
入れ歯は歯茎の土手部分(歯列弓)に義歯床を乗せるだけで安定させるため、顎の骨や歯茎内部の組織に刺激が届かなくなります。それが原因で、長年使用していると骨や歯ぐきが痩せてくるのです。オーバーデンチャーは土台が骨に埋入されていることで刺激が伝わるため骨の吸収を抑えて、入れ歯の不具合が起こりにくくなります。
オーバーデンチャーにもデメリットはある
利点をお読みになり「それならばオーバーデンチャーに」とお考えの方もいらっしゃると思います。オーバーデンチャーもいくつかの欠点もありますので、そちらも踏まえた上で修復方法として選択するかお考えいただければと思います。
上部構造は入れ歯ですが、安定させるためにインプラントの埋入が必要になります。そのため通常の入れ歯に比べて、外科手術を受けるという身体的負担は大きくなります。高齢者の方や持病があり観血的手術が受けられない方などは事前にご相談ください。
通常の総入れ歯よりも安定感が良くなったことで、しっかり噛めるようになります。そこで、咬合圧が大きくなり入れ歯が割れたり人工歯がすり減ってしまったりすることがあります。(増強のため、入れ歯の中にメタルフレームが入ることもあります。)
土台としてインプラントは使用していますが、上部はあくまでも「入れ歯」です。装着したままでは、上部構造と歯茎との間に汚れが溜まって不衛生になってしまいます。埋入しているインプラントに不具合が起こっても、装置の安定が保たれません。入れ歯の清掃方法と同様に外して清掃し、装置と口内をいつも清潔に保つようにしましょう。
インプラントやオールオン4に比べれば安価とはいえ、インプラント埋入もおこない保険適応外となるため、保険適応の入れ歯よりは高価な装置になります。金額をデメリットと考えるか、安定性や修理の回数が減ることのメリットを考えれば相当と考えるかは個人個人の感じ方があるでしょう。選択の際の目安としてお考え下さい。
まとめ
オーバーデンチャーは総入れ歯にするしか策が無いと諦めていた人にとって、とても画期的な修復方法です。ただ、通常の入れ歯にない外科手術が事前に必要であったり、お手入れも怠ればもちろん不具合は起こしてしまいます。そして、インプラントも入れ歯の技術も必要になるため、どの歯科医院でも受けられる治療という訳でもありません。
ご希望の際には事前にしっかり歯科医院で相談を重ね、納得のいく治療法になるようにしていただければ幸いです。